毘葉羅園(ビハーラとは、サンスクリット語で安息の地という意味)

 この庭は、神仙思想、仏教、密教、陰陽道の思想が取り込まれた枯山水庭園です。後ろの山は、九つあり古代インドの九山八海の思想を汲むもので中央が須彌山を表す。本来、山は四面で四宝(白金、瑠璃、玻梨、黄金)よりなると言われ、日月はその中腹を回ると言われる。ここには鹿児島紅梅、道知辺をはじめ多くの梅があります。

 左奥には滝があり、その水が大海に注ぎそこに亀島と鶴島が浮いている様子を表しています。中央の島は亀島を表し、右の島は鶴島を表す。亀島は静寂を鶴島は躍動を表しています。亀島の右端に立っている石は頭を示し、低く這う松の枝は甲羅を表す。鶴島は亀島よりも高く横に伸びた枝により翼を表現しています。鶴亀の後ろの左手に翼を広げた鳳凰、右手には龍、中国では龍は皇帝を鳳凰は皇后を表す。陰陽道の男女を示しています。

 この庭にはおめでたいものが三種類あり、一つは、長寿を祈る鶴と亀、二つには権力の象徴である龍と鳳凰、そして根上の松二本を含む松竹梅の三種です。中央の亀島には九つの石が置いてあり、金剛界曼荼羅の九会と胎蔵曼荼羅の中台八葉の両方が重なった金胎不二を表しています。鶴島には三つの石があり、仏、法、僧の三宝を表す。鶴亀を合わせて十二の石は十二の干支を示し、皆様の無事長久を祈っております。

 奥の三つの大きな石は、聖法院の本尊三尊、中央が大日如来、向かって右手が釈迦如来、左手が阿弥陀如来です。同時にこの三尊石は密教の根本思想である三密(身、口、意)の一致を意味し、三石は接するように、且つ本堂に相対するように配置されております。四方の四石は四天王(持国天、広目天、多聞天、増長天)を表す。この庭の中には人が踏む石を除き、八十一石あり、各々は御神仏を表し、八十一尊曼荼羅を意味しております。即ち、この場所は曼荼羅の中と言う事なのです。御神仏に守られた安息の場所であるが故に毘葉羅という名が付きました。右奥にあります十三重の塔は、中国の西安にあります小雁塔を象り、十三仏供養と将来予定しております大雁塔(七重塔)と呼応するようになっております。

 手前の黒い所は此岸(我々の現在の世界)を表し、向こう岸は彼岸(あの世の世界)を表しています。最後に三本ある松は、貪、瞋、痴を表し、亀島の松が貪(欲の松)向こうの大きな松が瞋(怒りの松)鶴島の松が痴(迷い愚痴の松)を表しています。また庭を見る機会がございましたらこの説明を思い出して頂き、人間が本来持っている仏心に少しでも立ち返るお役に立てたら幸せに感じます。