中道

国が違うと全く正反対の考え方をする場合があります。日本の商社が、かつての西ドイツの工場に機械の部品を注文した所、後日注文個数が足りない事に気づき、注文の個数が増えたので、「追加の分は少し値下げをしてくれ」と交渉をしました。それに対して工場からは「我々は最初に受けた注文で十分儲かっている。これ以上の仕事はしたくないから、どうしてもその商品が欲しいのならば、単価を高くしないと引き受けない。」と返事が来たのです。これを聞いた日本の商社はビックリしました。日本人はこんな考え方は、あまりしません。充分に儲かっている所へ追加が来れば、後は働く程、利益になるのだから単価を低くしてでも引き受けて、休日出勤や残業などでこなします。この場合は父親が帰宅しない会社人間となって、最悪の場合、過労死することもあります。しかし、これが日本経済の高度発展の大きな要因になったのも確かです。

先日、建売業者の営業の方が数人相談に来られました。家庭が上手くいかないから何か障りがあるのか、自分自身に原因があるのか?と言う内容の相談でした。話を聞くと皆さん真面目に働く方々ですが、全員離婚されていました。しかも仏壇も神棚もない方々でした。離婚の理由も同じで、遊びや浮気ではなく、ただ休みなく、ひたすら働く事が気に入らないと言う理由で奥様から離婚を言い渡されたそうです。

私達の年代には考えられない事です。私達の若い頃は徹夜も多く、わずかな時間に帰宅して、シャワーを浴びて、慌しく朝食を食べて直ぐにまた会社に出かける、と言う日々が続きました。ただ主人に対してご苦労様と思うだけで、それが不満だなんて、とても考えられない事でした。私達の時は若いうちに働けるだけ働いて、少しでも貯金して老後に困らない様に頑張ろうと言う思いしかありませんでした。今の時代は何とか食べて行けるから、精神的な満足感も得たいと思うそうです。それだけ日本は豊かになったのでしょう。それで本当に老後困らなければ良いですけどね。しかし、お釈迦様は2500年も前から「中道」の心を説かれておられました。「中道」とは極端な考え方をしない教えです。「中道」を俗的な言い方をすれば「頃加減」(ころかげん)だと思います。頃加減は人によって違います。例えば、お風呂の湯加減です。これは熱い方が好きな人や、ぬるい方が好きな人がいます。この様に頃加減は人によって違います。結婚生活も主人が真面目に働いてくれたら有難いと思う人と、収入は食べて行けたら十分で、後は夫婦で共有出来る時間が欲しいと思う人がいます。お互いの「中道」を見つけて暮らす事が良いのかな、と思います。ただ年をとって生活が苦しいからと主人に文句を言うのは間違いです。女性でも若い時に三食昼寝つきと、共稼ぎとでは自ずと老後の生活の豊かさは違って来ます。どの年齢で二人の共有出来る時間を過ごすかによって生活は違って来ますが、ご神仏がおっしゃるには精神時間は、ほとんど平等に与えられているそうです。これから結婚される人はよく考えて、どの年齢で共有出来る時間を持つと一番有効なのかを考えて下さい。経済的にも精神的にも頃加減を見つけて暮す事が大事です。  合掌