極楽浄土は西方?

 極楽は西方浄土と言って、西にあると思っている方が多いようですが、東西南北全ての方向にあります。日本は特に浄土教が盛んです。阿弥陀経によると、阿弥陀様の浄土が大変美しく描写されていますので、極楽は西方にあると人伝に広まったのです。もう一つの理由は佛教の発祥地インドでは、夕陽が沈む景色が、口では言い表せない程の美しさがあり、信仰していない人でも、思わず手を合わせたくなる荘厳さにより、西方に浄土があるとの思いがあるのです。

 大日如来を中心として釈迦如来、阿弥陀如来、阿閦如来、宝生如来、以上の五智如来が浄土を守っておられる。いずれの浄土もありがたい所です。従って西にだけ極楽浄土があると思うのは間違いです。『阿弥陀経』には西方10万億土の彼方に極楽浄土がある、と書かれてあります。特にインドではどんな事柄も数字で表す風習があります。日本の様にはるか彼方と言うような抽象的な言い回しはしません。10万億土の土は国を表します。実際には国の数がそんなにあるはずが無いことは、当時の人々も知っていました。それでは何を表したいのかと言えば、浄土までの距離ではなく私達の迷いの深さ、迷いの数を表しています。数多い煩悩や迷いを越えた時、極楽浄土へと導かれることを意味します。

 お釈迦様は自分が極楽へ行けるのか、否かを考える暇があれば、たった今の時間を無駄に使うな、人間としての修行をせよ、その積み重ねによって、自然に極楽浄土に導かれると説かれています。私達も自分の人生の時間を、無駄にせず意義あるものにいたしましょう。

合掌